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竹内紘三、武村和紀、田中雅文、奈良祐希

Fractal Synergy

2021年4月17日(土) – 6月26日(土)

開廊時間:13:00 - 19:00、休館日:日曜日

この度YOD Galleryでは、竹内紘三、武村和紀、田中雅文、奈良祐希によるグループ展“Fractal Synergy”を開催します。

 

本展では、幾何学的な構成で作品を制作し続ける現代陶芸家4人が集まり、それぞれの作品同士が語り合う空間が作り上げられている。“Fractal”とは自己相似図形を意味し、“Synergy”は相乗効果のことである。4人の作家は、基本的な形と構成を独自で設定し、その制約のなかでいかに表現できるかを探ってきた。各々の作品1つのなかでも“Fractal Synergy”が成立しているが、今展では、同じ空間に白という色の作品に限定して展示することにより、また新しい発見が生まれるであろう。

 

「陶芸」は形の柔らかさ、そして炎の強さなどというイメージがある。今回の展覧会の目的は、そのイメージを覆す「陶芸」を取り上げることである。幾何学的な構成やコンピューター技術を用いた作品は、一見3Dプリンターで作られたものと思われることもある。古からのテクノロジーとも言える陶芸を通して、現代の表現に挑む4人の作品が奏で合う本展を是非ご高覧ください。

 

「Fractal Synergy-境界を抜ける」

 

 “Fractal”とは幾何学的な概念で、図形の部分と全体とがおなじかたちとなる自己相似性を持つものなどをいう。その相乗効果(Synergy)として本展のタイトルが冠せられているが、これは陶磁の連続性、集積または構築による4人の幾何学的な造形に共通性を求めた言葉として用いられたものと理解することとし、ここでは、同時代性とかれらの表現について触れたい。

自身の生きる時代は、作家にとって大きな影響力を持つ。過去・現在・未来とどの時代をとらえるときも視点は常に主体がおかれた現代、さらにいえば現在を中心に展開される。最年長である竹内を起点としても、4人がこれまで過ごしてきた時代のなかで、社会は科学技術的な部分だけでなく、人々の考え方も含めて目まぐるしい変化を遂げている。あらゆる事象、状況において様々な立場、多様性を許容する時代となった。陶芸においても同様に、既存のイメージを超えていく4人のアプローチやそこから生まれた造形をみたとき、それを実感する。陶芸の領域は格段に拡がり、従来の絵画、彫刻、工芸、デザインにおける工芸で語ることが難しい横断的な表現が多くみられるようになり、その概念は現在進行形で更新されている。しかしながら、最終的に土によって造形をなすという点で、根幹の部分では、素材に触れ、触覚や嗅覚といった五感を触発する陶芸の持つリアリティを拠りどころとしているのも事実である。

竹内は、朽ちた造形物や遺跡などの不完全な儚さに力強さや美しさを見出し、組み上げた作品を壊すことによって、創造と破壊といった時間軸を作品に取り入れるとともに、割れることがマイナスイメージとなる陶芸の固定概念に疑問を投げかける。

田中は、小さなものの集積が一つになるときのエネルギーを作品で体現する。繊細な磁器片が集まり、塊(作品)として提示されたとき、素材の見え方は大きく変化する。白い四角形というシンプルな構成要素を通して、その感覚が素直に入ってくる。

武村は、手捻りで作ったピースを接着しながら幾何学形態を構築し、あらゆる制約と折り合いを付けながら生まれる必然的な構造をかたちにする。全体を見ると無機的な印象を受けるが、近づくと揺らぎが生じた線や綿密な構造に有機的な生命感が混在する。

奈良は、3D CADによる建築的要素を陶芸に持ち込み、その異質さをナチュラルに交差させていく。ジャンルの融合というボーダレスな現代的感覚の中に、縄文土器という古代からの日本的な美意識や価値観も包含した独自の造形感を示す。

コンセプトは違えど、土で表現することに縛られないような造形を、あえて普遍的な陶芸の手法で提示する4人は、従来の陶芸に挑戦的なようだ。これまでの既成概念が作った隘路をしなやかにすり抜けていくような造形は、現代という多様性の時代を鮮やかに映し出しているようにみえる。

 

(兵庫陶芸美術館 学芸員 村上ふみ)

 

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