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  谷川 千佳

「わたしは夢のかけら」

会  期:2010年9月18日(土)~10月16日(土)
  

閉廊日:毎週日・月曜、10月9日(土)  開廊時間:11:00~19:00

オープニング・レセプション 9月18日(土)17:00~ YOD Galleryにて

谷川 千佳 公開制作 9月25日(土)14:00~ YOD Gallery外壁にて
 

    このたびYOD Galleryでは、23歳の新進作家、谷川 千佳(Chika Tanikawa, b.1986)の個展を開催いたします。
 

    谷川が描く人物像を、彼女は「自画像」として自ら定義づけています。「自画像」はバロック期にかけて美術の1ジャンルとして確立し、現在も多くの作家がモチーフの対象としています。「自画像」に表現される一般的な主題には、自らの容姿を伝えるものから、自らの威厳を付加させるもの、更には自らの精神性ともいえる内面を映し出すものへとさまざまな変遷をたどっています。彼女が常々描いている「自画像」に込められた主題は「空虚な自我」です。その「自画像」は自らの容姿を表面的に描き写すのみの手法であり、その中に自我を形成するような要素は存在していないと彼女は言います。つまり、自らの存在自体が不確かなものであるという前提の下、人間の存在の意味・定義を探し求めることを主題に、彼女は「自画像」を描き続けています。

 こうした手法で谷川が「自画像」を描く要因には、近年の日本の現代社会の動向が大きく反映されています。現在20代になる若者たちは、子供の頃からデジタル社会の恩恵を受けて、膨大な情報に左右されながら育ってきました。インターネット、アニメやゲームを中心とした仮想現実の世界に慣れ親しみ、情報としての世界中の様々な出来事などを、自らの体験の内に容易に引き込んでいくことが当たり前のようになされてきました。しかしながら情報量だけが肥大して、それらの取捨選択や分類が追いつかない現状が発生し、一つの指針・答えが見い出すことが困難になり、新たな価値観が明確に提示できない混沌とした現代がここに横たわっています。

 そんな現実と空想の境界線さえも明確にできない状況の下、谷川が自我を見いだすために頼る第一の体験とは、睡眠時に見る「夢」です。彼女の「自画像」で表現する世界は、自らが見た「夢」の出来事を忠実に描き取ったものです。彼女にとって「夢」とは、実際に本人が目の当たりにした実体験の断片と捉えています。現実と空想が区別無く入り乱れた社会との接触の中で、彼女の深層心理に深く刻まれたものとする「夢」は、彼女が両者を区別する重要なフィルターとなっているのです。更に「故郷」という概念も彼女にとっては自我を見つける重要な要素です。自らの起源と認識しうる母体や出身地といった記号的な要素を見い出すことで自我の方向性を発見し、一つの筋道を立てる。この繰り返しによって、彼女は「空虚な自我」を埋めていく作業を、彼女が描く「自画像」の中で絶えずおこなっているのです。

 当展は、現実と空想の狭間で自我を探し求める谷川の「自画像」を、新作を中心としたキャンバス作品にてご紹介いたします。また外壁にて谷川による公開制作も会期中に開催いたします。彼女の「夢」の断片から生まれたモチーフたちが、彼女の筆を通じて私たちの眼前に現れる瞬間を共に体験していただきながら、深層心理の中の現実を感じていただければと思います。

 新しい世代の新しい価値観を持つ人間が現れ、価値観の違いがさまざまな反応を起こし人類は進化してきました。新世代の作家が新しい価値観を提示する瞬間を、私たちは見逃すことはできません。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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