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  町田夏生

 

「華と眉毛」

会 期:2014年11月8日(土)~11月29日(土)


閉廊日:日曜・月曜日、開廊時間:12:00~19:00

この度、YOD Galleryでは5年ぶりとなる町田夏生(Natsuki Machida, b1980)の個展を開催致します。今展のタイトルである「華と眉毛」には、今までと変わらない町田の表現とそこに挑戦する新たな意思の両方が込められています。

町田の作品にはなじみがある「華(はな)」のモチーフは、今展でも埋め尽くされるように登場します。町田にとって「華」はただの植物ではなく、心の内側から湧き出るエネルギーを餌にして絶え間なく成長する生き物のような存在で、その力強さはただ美しいものとして表現される装飾的な意味を超越し,見る側に圧倒的な力で迫ってきます。町田の作品と言えば、鮮やかなピンクを基調とした絵画を誰もが想像し、その色のあまりの鮮やかさや「華」と言う一見装飾的なモチーフから、シンプルに「かわいい」絵として受け入れられてしまいがちです。しかし、その絵画の中には「華」がひしめき合うように存在し、あたかも町田の心の深いところにある空間が、何かのきっかけで暴力的に破壊され炸裂し、絵画を通して外界へ飛び出してきたかのような印象を受けます。この異常に鮮やかで目の覚めるような色彩や美的感覚は、言うまでもなく町田自身の体験に基づくものでもあります。子ども時代に見た宝塚歌劇団の誇張された美や少女漫画の夢のような世界観、友禅の装飾的な美、そういったものがモチーフの根底にあり、町田作品を変わらず支え続けています。

しかし、そういった変わらない町田の表現の中に、今展では「眉毛」が登場します。「眉毛」は今までの町田作品に登場する人物像や顔には描かれていませんでした。町田は、「眉毛は顔の表情の中で意思を表すもので、今までは登場する人物像にそういったものを持たせたくなかった。」と言います。描かれているものの持つ意思、すなわち作者の意味付けを見る側に考えさせたくなく、それは自由な解釈にゆだねられていました。今回はあえてその「眉毛」を個展のタイトルに用いており、展示では眉毛の描かれた肖像画も並びます。このシリーズは紙にパステルやアクリル絵具を使って、町田が日々出会う世の中の出来事に対する思いや激しい心の衝動が、直感的または比較的瞬時に描かれています。一般的に見られる誇張された「かわいい」少女漫画の瞳よりも、はるかに大きく描かれた町田の作品に登場する人物像の目やその中に描き込まれた星や水玉のようなものは、その色の鮮やかさも相まって、見る側に迫るようにこちらを見つめ、その様子はヒステリーさえ彷彿とさせます。眉毛の存在はその強いまなざしを支えるように、作家の思いを絵の向こう側から伝えているかのようで、町田の成長した主体性が伺えます。

一見「かわいい」と安易に解釈されてしまいそうな色彩やモチーフに、自身の溢れんばかりのエネルギーを込め、見る側を取り込み、町田は自分の世界を見失うことなく描き続けています。ぜひ今個展にお運びいただき、町田夏生の途絶えることのなく発展した絵画表現の世界と、新たな意志を見届けていただきたいと思います。

 

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