藤井 健仁
90年代より精力的に製作発表を行ってきた藤井は、鉄が近現代に生み出した「富、権力、暴力」を表象する著名人の顔を鉄の面に置き換える「彫刻刑 鉄面皮」(*)により2005年、第八回岡本太郎記念現代芸術大賞にて準大賞(大賞該当者なし)を受賞、2008年には愛知県芸術文化選奨 新人賞を受賞し、高い技術と表現方法が各方面から評価されている。
藤井の表現は逆説に貫かれていると言っても過言ではない。鉄鍛造という同技法同素材ながら対極的スタイルを持ち、しかもモダニズムから排斥され続けて来た「面と人形」を範とする二つのシリーズ、「鉄面皮」と「New Personification」を並行して制作している事からもそのことが伺える。「鉄面皮」では撲殺に等しい鍛造労働による殺意自体の形象化に始まりながら対象人物への善悪を超えたシンパシーに到達し、一方愛らしい人形を造形しながらもその材料である鉄との交錯の中で残酷かつ非情な制作物となる「NewPersonification」、双方とも初見の印象とは逆転した着地点を持っている。只、逆説の可能性を記号を並べての連想に委ねていくありがちな方法とも、定説に依存することで成立する当てこすりの逆説とも異なる、その逆説こそが実は本来の定説なのではないかと思わせる説得力は、作家が逆説と向き合い現実の重作業の中でそれを履行した結果練り上げられた技術と物品の強度によるものといえる。
CV
1967 愛知県名古屋市 生まれ
1990 日本大学芸術学部 卒業
【個展】
2020 「天覧美術 Art with Emperor」、KUNST ARZT(京都)
2019 「New Personification vol.6 アブジェクションX」日本橋高島屋美術画廊X(東京)
2016 「鋼鉄のグランギニョール 」YOD Gallery(大阪)
「New Personification Vol.5 GIRLSLIFESMITH」日本橋高島屋美術画廊X(東京)
2012 「New Personification Vol.4 私たちのどこまでが鉄ではないのか」unseal contemporary(東京)
2009 「Double Irony」Gallery M contemporary art(愛知)
2008 「鉄面皮 Extended」ストライプハウスギャラリー(東京)
2007 「New Personification Vol.3 人形の融点」ストライプハウスギャラリー(東京)
2005 「New Personification Vol.2 PSEUDO METAL BOSSA」ストライプハウスギャラリー(東京)
2004 「彫刻刑 鉄面皮」ストライプハウスギャラリー(東京)
2003 「New Personification」ストライプハウスギャラリー(東京)
2002 「Exculpture」Gallery APA(名古屋)
「Exculpture」PORT des ART(東京)
2001 「Exculpture」Gallery APA(名古屋)
「個展」アートコレクション中野(名古屋)
1996 「小品展」Gean art space(埼玉)
1992 「個展」愛宕山画廊(東京)
【主なグループ展】
2019 「岡本太郎美術館20周年記念展」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)
2015 「像形人間」みうらじろうギャラリー(東京)
「現在幽霊画展」TAV GALLERY(東京)
2014 「TARO賞の作家 Ⅱ」川崎市岡本太郎美術館(川崎)
2013 「SUMMER SHOW 2013」日本橋高島屋美術画廊X/新宿高島屋美術画廊(東京)
「溶ける魚 つづきの現実」京都精華大学ギャラリーフロール/Gallery PARC(京都)
2011 「激凸展」unseal contemporary(東京)
2007 「City_net Asia 2007」ソウル市立美術館(韓国)
2005 「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞展」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)
2004 「第7回岡本太郎記念現代芸術大賞展」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)
2002 「KOREA MASS/JAPANESE FIGURE」MOK AM MUSEUM(韓国)
1999 「新世紀人形展」ストライプハウス美術館(東京)
1998 「WORK'S 98」横浜市民ギャラリー(以降1999、2000年参加)(横浜)
【受賞歴】
2008 平成19年度 愛知県芸術文化選奨 新人賞
2005 第8回岡本太郎記念現代芸術大賞 準大賞 川崎市岡本太郎美術館
1999 新世紀人形展 日向あき子賞 ストライプハウス美術館(東京)
1990 日本大学芸術学部 学部賞