服部 正志 展


ヒト○二面性○ヒト


ワークショップ「ワタシノマル」
日時:2009年6月18日(木)10:30〜12:00


会場:愛真幼稚園(大東市)


協賛:寺西化学工業株式会社/カードル・エフ
当展では関連企画としまして、会期に先立ちまして6月18日(木)に大東市の私立愛真幼稚園にて、ワークショップ「ワタシノマル」を開催いたしました。
3歳児から5歳児までの園児326名を対象とした当ワークショップのテーマは「マルを描く」。幼年期の体験として、初めて意識的に描こうとして出来上がったかたちの一つが「マル」ではないでしょうか。服部正志が講師として園児に「マル」を描くことの楽しさを伝えるこのワークショップでは、練習としてのプロセスを経ながら、最終的に一人一人が油性マジックを使って小さなアクリル板に「マル」を描き上げるものです。そして、これら326人分のマルが個展の開催期間に弊廊の外壁に展示されます。また秋に開催される幼稚園の美術祭でも再構成して展示される予定です。
単純に描くことの楽しさのみならず、意識的に描くことの必要性・楽しさを強調したこの企画は、小中高、そして大学とほぼ全ての教育機関で教鞭を振るった経験のある服部が、人間性をはぐくむための美術教育の可能性を探る企画でもあり、ギャラリーの枠を超えた企画を追究する弊廊のスタンスにも合致するものです。


幼稚園の会場、お遊戯室に到着。
WS直前のミーティング中です。
ボランティアスタッフとして美大生の方を中心に
8名の方が集まってくださいました。


クラスごとに今回園児のみなさんに使ってもらう
画材を仕分け中。
300人超の園児が一堂に集まります。
どのような展開になるのか今からドキドキワクワク。


10時を回って、お遊戯室に最初のクラスが先生と共に入場です。
先生からは絵を描くことしか聞かされていない園児のみんなは、
やや緊張の面持ちでした。
服部さんやスタッフもやや緊張しながらのお出迎えです。


続々と園児のみんながお遊戯室に入っていきます。
広いお遊戯室がいつのまにか子供たちでいっぱいに。
スタッフも担当クラスの園児たちにご挨拶。
これから何が始まるのか、園児たちの期待を盛り上げます。


10時半になりワークショップが始まりました。
まずは園長先生のご挨拶から。
とても礼儀正しい園児のみんな。
今回何をするのか、静かに園長先生のお話に耳を傾けます。


さて園長先生から、服部さんのご紹介です。
服部さんはこの愛真幼稚園の卒園生です。
この度はこうした縁と、園長先生をはじめ
先生方みなさんのご理解のもとでWS開催の運びとなりました。


服部さんのご挨拶、「おはようございます!」
その直後、一斉に300人超の声が
地響きのようにお遊戯室を包みます。
「おはよ〜ございま〜すっ!!!!」


園児のみんなに「マル」を描いてもらうことの説明です。
ユーモアいっぱいのトークで園児たちをひきつけます。
「もしアンパンマンが四角だったらどうなる?」
「しょくぱんマンになっちゃうやん!ドキンちゃん喜ぶで〜!」


お話の後は、準備運動?
「自分たちの身体を使ってマルを作ってみましょう」
「先生がおっきなマルをつくってみます。みんなも一緒に。」


園児のみんなも服部さんに負けじと
身体いっぱい使って大きなマルを作ります。
「ん〜んしょ!!」


さて、身体もほぐれたところで、お絵描きスタートです。
まずは画用紙に黒のクレヨンで「マル」を描いていきます。
みんなに紙が行き渡るまでちょっと待ってね。
早く描きたくてウズウズしている子もいました。


さっき身体で作った「マル」を意識しながら
腕を天に向けてグルグルグルグル。
自分の身体に染み付いた「マル」を
どんどん床の画用紙に下ろしていきます。


腕が画用紙まで下りたら、お絵描きスタート!
みんな思い思いの「マル」を描いていきます。
一つ描いてもまだ物足りず。


画用紙のお絵描き時間は5分程度でしたが、
みんな時間をフルに使って
画用紙いっぱいにたくさんの「マル」が描けました。


「みんな、どんなマルが描けたか見せてください」の服部さんの声に
「できた〜!」と立ち上がって見せてくれる園児たち。
独特のお絵描きスタイルに園児のみなさんもテンションアップ!


さて、次は12cm四方のアクリルの板が園児たちに配られます。
あまり日常に触れたことの無いものに園児たちは興味津々。
表面に貼られた紙をはがしたくて待ちきれない子も。


表面に貼られた紙をはがしたら、透明の板が出現。
「まず板を顔の前に置いて、色んなものを見てみましょう!」
顔に近づけすぎて板が曇ってしまうのを楽しむ子もいました。


アクリル板のお絵描きに使うマジックも登場です。
「マジックはどんなものにでも描けてしまうから気をつけてね。」
珍しいお絵描き道具続々登場に、園児たちもワクワク。


服部さんの号令とともに、アクリル板へのお絵描き開始。
まずは黒のマジックで「マル」の輪郭を描きます。
馴染みの無い道具への戸惑いか、
最初はみんな恐る恐る少しずつ描いていました。


みんな思い思いの「マル」が出来上がりました。
きれい、きれいじゃないは問題ではありません。
各自の身体を通じて意識的に「マル」を描くことが
今回の大切なテーマです。


中には1枚のアクリルにたくさんの「マル」を描く子もいました。
それでいいんです。
子供でも「マル」の概念は人それぞれですから。


さて、ここからまた新しい展開が始まります。
服部さんの掛け声でみな「おひざだっこ」の体勢で話を聞きます。
次はいろんな色のマジックで「マル」の中を塗りつぶします。


「マジックの本数は限られていますので、取り合いをしないでね。」
みんなゆずりあいをしながら、色のマジックで塗り始めました。
「自分の色と思うマジックでマルを塗りつぶしてくださいね」


大きなマルを描いた子は、全部を塗りつぶすのに大変。
でも一心不乱に塗りつぶしていきます。
誰が先に出来上がるか競争です。


先に出来上がった子は、先ほどの画用紙を裏側にして
マジックでまたお絵描きを始めています。
いつものクレヨンと違うので新鮮なんでしょうね。


「出来上がった透明の板を目の前にかざして
隣のお友達や色んなものを見てみましょう。」
「どのように見えますか?」


「赤いヒトに見える〜!」「青い身体に見える〜!」
さまざまな声がお遊戯室に響き渡ります。
顔にくっつけすぎて、鼻にマジックがついてしまった子も。


次のステップは先ほど色を塗ったアクリル板を裏返して、
裏面にも表の輪郭に合わせて塗りつぶします。
ただし、色は表に使った色と違うもので。


さっき塗ったはずの色がみるみる変身。
中には赤を塗り重ねたのに違う色になったとびっくりする子も。
予想外の展開に、疲れた様子も無くノリノリです。


作ったものに愛着が強まったのか、
カメラを向けるとみな顔にアクリル板をかざしたポーズをとります。
まもなくワークショップも最終段階です。


服部さんより最後の説明です。
「出来上がったアクリル板をもう1枚の紙にかざしてみてください。」
「紙に色が映るのが見えますよ。」


「どうですか?うまく見えますか?」
室内ということもあって、実感を持った子は多くなかったですが、
それよりも顔にかざして友達を見て楽しむ子が多かったです。


これでワークショップは全て終了です。
あとかたづけはみんなでやりましょう。
みんなが描いてくれた画用紙は持って帰ってね。


最後に服部さんよりご挨拶。
今回描いてくれたアクリルはギャラリーで展示した後、
12月の幼稚園の造形展でみなさんと再会できます。


園児のみんなから大きな拍手と
再び地響きのような大きな声で「ありがと〜ございました〜!」
こちらこそ、本当に貴重なお時間ありがとうございました。


名残惜しいお別れです。しっかりサポートしてくれたスタッフに
園児たちが、顔が見えなくなるまで手を振ってくれました。
園児たちにとって、この体験が少しでも人生の糧になりますように。
弊廊初の試みとなるワークショップは、多くの皆さまのご協力により、無事に終了いたしました。

当ワークショップは、自発的に何かを意識して描き始める過渡期にある幼稚園児に対して、
いかに自発性を引き出すかがキーポイントでした。
作家・服部正志の園児へのアプローチ方法のプランでも、「マル」を意識付ける程度をどの辺りで調整するかが、最も難しい判断でした。
当日現場では、3つのマルで構成される具体例の提示と、身体でマルを表現する行為のみにとどめ、
意識付けによって園児の大半が同じような「マル」を描かないことに重点を置いたアプローチをおこないました。
結果として、成果物となるアクリル板には普通のマル一つのもの以外にも、
四角三角や複数のマルを描くアクリル板が出来上がりました。
多くの教育機関で教鞭をとる服部ならではの、現場経験を大いに活かしたプロセス重視の対応が実を結んだかたちとなりました。
これらが弊廊の個展会場では、二面性の象徴として服部のインスタレーションによって外壁に彩られます。
ぜひ当展の会期中にこのコラボレーションをご高覧いただければと思います。

このワークショップ開催の場を快く引き受けてくださいました愛真幼稚園の皆さまをはじめ、
画材を提供してくださった寺西化学工業株式会社様、カードル・エフ様、
当日のサポートをしてくださったボランティアスタッフの皆さまのお力添えの賜物で、開催はもとより無事に遂行することができました。
改めましてご協力くださいました全ての皆さまに、心より御礼申し上げます。


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